「最高の名医は自分である。最高の良薬は自分の中にある。」
　私達は生まれた時間、育った環境、生活習慣により、一人一人体質が異なり、骨格も違います。弱いところ、強いところなどの固有の身体の「癖、個性」を持っています。世の中にはたくさんの健康法があり、様々な考え方や技術がありますが、すべてに共通していることは、「最も重要なものは見えないところにある。見えないけれど存在している。」
道家思想では、「気」は「炁」と書き、先天の気、宇宙の根源、陰陽を生む前のエネルギー体であり、「炁道同源」つまり、自然治癒力です。
“錬精化炁，錬炁化神，錬神還虚”これは道家思想における養生のための修練方法のプロセスです。不純物の多い玉鋼を鍛錬して、洗練された真刀が生まれる如く、気功でも段階を追って修練し、不純物を取り除いていきます。「精を錬し、炁と化す。炁を錬し、神と化す。神を錬し虚に還る」この「虚」に還るというところが、真髄といえます。生まれたばかりの赤ん坊（自然体）の状態に戻ることです。このプロセスにはまだ続きがあり、虚に還り、さらに「錬虚合道」（虚を錬すれば道に合う）して初めて、道を悟ることができるということです。
　私達の「気功法」は、炁のエネルギーを鍛錬（修練）する最初の段階ですが、自己治癒力を高める上では極めて重要な第一歩です。病気や癌は、潜在意識や心の作用（こだわり、経験、好き嫌いなど）から起こりますから、唯識でない状態（赤ん坊）にならなければ、自然治癒力が活性化されず、治療することができません。「耳が聴こえない人は耳が聴こえる人より良く聴くことができ、目が視えない人は目が視える人よりよく視ることができる。」心は物に生まれ、物に死ぬ。心が生まれたり死んだりするのは、目や耳の働きにある。（道教経典≪陰符経）より）
　気功の本質は、「至静（安寧）」にある。「至静」これが自然之道であり、養生之道です。気功を通して、見えないものを見る力、感じられないものを感じる力を取り戻すことは自分のなかの「炁のエネルギー」を活性化することであり、自分という器に対する未知への探究、大いなる道への旅と言えるのではないでしょうか。